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遺留分
遺留分
父が子どものうち一人だけに全財産をあげるという遺言を書いていました。私は全く相続できないのでしょうか。
相続人には、法律上取得することが保障されている相続財産の一定割合があります。それを「遺留分」と言います。
遺言書を書く場合には、この遺留分について注意することが大切です。
遺留分がある相続人と遺留分割合は次のようになります。
・直系尊属(父母、祖父母など)だけの場合、相続財産の3分の1
・それ以外の場合、相続財産の2分の1
・兄弟姉妹には遺留分なし
父Aが子Cだけに全財産を相続させるという遺言を遺していたとしても、妻Bと子D、子Eには相続財産の2分の1の遺留分が認められます。
Bの遺留分 1/2(法定相続分)×1/2=1/4
DとEの遺留分 1/2×1/3(法定相続分)×1/2=1/12
Bの遺留分は相続財産の4分の1、DとEの遺留分は相続財産の12分の1ずつとなります。
≪遺留分の侵害があったら≫
受け取った遺産が遺留分よりも少ない場合に、不服がある相続人は遺留分を侵害している人に対して「遺留分減殺請求」を行使して取り戻すことができます。
父親がCに全財産を相続させるという遺言を遺していた場合の例で言えば、他の相続人はCに対して遺留分減殺請求をするということになります。
遺留分減殺請求の方法には、特別な決まりはありません。遺留分を侵害している相手に対して「返して!」と意思表示をするだけでも良いです。すんなり話し合いに応じてくれる相手であれば全く問題はありませんが、そうでない恐れがある場合には、配達証明の付いた内容証明郵便等で行うと良いでしょう。
家庭裁判所へ調停の申し立てをすることもできます。
≪遺留分減殺請求には時効があります!≫
●遺留分の権利のある人が相続の開始を知った時、減殺することができる贈与・遺贈があったことを知った時から1年間
●相続の開始の時から10年間
これを過ぎると請求できなくなってしまいますので期限には気を付けましょう。
『遺留分減殺請求の算定方法』
●遺留分を算定するときに基礎となる財産の計算方法
相続開始時の遺産額+相続人以外の者への相続開始以前1年以内にした贈与+特別受益の額-債務額
※相続開始時の遺産額には、遺贈や死因贈与された財産も含まれます。
※相続人以外への贈与について「当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知りながら」贈与した場合には、1年より前であっても含めます。
※すでに贈与された財産は、相続開始の時点の価額(時価)に換算して評価します。
『減殺の順序』
減殺の対象になる遺贈や贈与が複数ある場合には、減殺の順序が決まっています。
①遺贈と贈与が複数あるとき
まずは遺贈の方を先に減殺し、それでも遺留分に満たないときは贈与を減殺します。
②遺贈が複数あるとき
遺言者が遺言で別の意思表示をしていない限り、減殺の総額を各遺贈の額の割合に応じて減殺します。
③贈与が複数あるとき。
相続の開始時により近いものから先に減殺していきます。
④死因贈与がある場合
遺贈→死因贈与→生前贈与の順番で減殺します。(東京高判平12.3.8)
※減殺請求の相手方である受遺者にお金がない(無資力)ことにより受けた損失は、遺留分権利者が負担することになり、他の贈与に対して減殺することはできません。
『遺留分の放棄』
相続放棄は被相続人が亡くなった後でなければできませんが、遺留分は被相続人が亡くなる前にでも放棄することが出来ます。ただし、相続開始前に放棄する場合には家庭裁判所の許可が必要です。
被相続人が遺留分を持つ人に対して、放棄を強要するような事態を避けるため、遺留分の放棄が自己の意思によるものであることを家庭裁判所に対して申立て、許可を得た場合に限って事前に放棄ができることとされています。
相続開始後の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可は不要です。
※遺留分の放棄は各相続人がそれぞれ単独ですることができます。
※遺留分を放棄しても、相続自体を放棄したわけではありません。法定相続人としての地位を失うことはありません。遺留分の侵害がある分割が行われたとしても遺留分減殺請求をすることが出来なくなるということです。
遺留分を侵害しない遺言書だとしても、家業を継がせたい子どもに多めに財産を遺したい場合などで、他の子どもと平等に分けられないという事情もあると思います。
その場合にはどうしてそのような分け方にしたのかを「付言事項」という形で遺すことができます。
「付言事項」は法的には効力はありませんが、想いを伝えることは出来ます。
相続人間に漂う不平等感を払拭するためにも、付言事項は活用しましょう。
遺言は誰が保管するのか
遺言書を作成しました。どこで保管するのが安全でしょうか。
遺言書のうち一番安全・確実なのは公正証書遺言です。原本は公証役場で保管されています。相続が開始した場合、平成元年以降に作成した公正証書遺言であれば公証役場へ照会(※)することにより、容易に見つけることができます。
自分で書いた遺言の場合はどうでしょうか。自宅の金庫の中や、タンスの引き出し奥深く?
分かりやすい場所なら相続人も見つけやすいと思いますが、本人にしか分からないような場所に隠してしまうと、いざと言うときに発見されない可能性もあります。
だからと言って、分かりやすい場所に保管しておくと、自分に不利になると恐れた相続人によって隠されたり、改ざんされたり、果ては捨てられてしまう心配も出てきます。発見されて偽造されたりしないか気が気ではありません。
これを防ぐには、家族以外の信頼できる人に書いたことと、保管してある場所を伝えておくことです。それでも自宅にあると気になるものです。
一番安心なのは、遺言・相続の専門家に保管を依頼することです。専門家を遺言執行者に指定しておけば、相続が開始したときに、遺言に関する必要な手続きを取って貰えます。
ワンポイント!
遺言書の隠し場所に「銀行の貸金庫」が一番安全そうだと思われますが、実は一番避けるべき保管場所です。
と言うのも、遺言者が亡くなったことが銀行に伝わると、預金口座の凍結は勿論のこと、貸金庫だって勝手には開けられなくなってしまいます。例え他人のものを預かって保管していたとしても、です。
貸金庫を開けるためにも指定の相続手続きが必要になります。
やっとの思いで開けたと思っても、保管されていたのが自筆証書遺言だった場合には検認の手続きも必要となります。相続手続きにも影響し、相続人にも大変な負担を掛けることになりますので、貸金庫への保管は止めましょう!
・公証役場での遺言の有無の調査
平成元年以降に公正証書遺言を作成している場合は、公証人連合会というところで、
・遺言者の氏名
・生年月日
・公正証書作成年月日等(遺言書の内容は含まれません)
これらの情報がデータベース化され、管理されています。
公証役場ならどこでも「遺言検索システム」による照会を依頼することが出来、被相続人の公正証書遺言の有無を確認することができます。
※遺言の検索の依頼や謄本の請求は、遺言者生存中は遺言者本人しかできません。たとえ相続人であっても受け付けては貰えません。
・公正証書遺言を検索するときの必要書類
・遺言者が亡くなったことを証明する書類(除籍謄本、死亡診断書等)
・請求者が相続人などの利害関係人であることを証明する書類(除籍謄本に請求者の名前が載っている場合には不要です)
・請求者の本人確認書類(印鑑証明書と実印、又は免許証、住民基本台帳カード(顔写真付、)など)
※当事務所では、公正証書遺言検索を代行して行っております。ご相談ください。