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遺言書の種類と特徴
遺言書の種類
遺言書を書くといっても、どのようなことをどうやって書けばよいのでしょうか。
普通方式の遺言には3種類あります。
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
平成28年度の公正証書遺言の作成件数は約10万件で、10年前の約1.7倍となっています。近年、遺言に対する関心が大変高くなっているのが良くわかるかと思います。
自筆証書遺言や秘密証書遺言については、平成26年度の「検認の手続き申立件数」では約1万6千件となっています。(家庭裁判所の司法統計より)この1万6千件は、あくまで相続開始後に家庭裁判所に検認の手続きのために持ち込まれた数なので、表に出てきていない「タンス預金」ならぬ「タンス遺言」はもっと多いことでしょう。
普通方式に対して特別方式の遺言というのもあります。
①危急時遺言
※疾病やその他の自由によって死期が差し迫っている人、船舶が遭難した場合にその船舶の中にいて死亡の危機が迫っている人が書ける遺言
②隔絶地遺言
※伝染病のための行政処分によって交通を絶たれた場所にいる人や、船舶の中にいる人が書ける遺言
それぞれ死期が差し迫っていて、やむを得ない状況で認められている特別な方式の遺言です。
ここでは、一般的に使われている「普通方式の遺言」について見ていきたいと思います。
まずはそれぞれの特徴とメリット・デメリットを比べてみましょう。
<自筆証書遺言>
自分で書く遺言書のことです。一番手軽に作成できます。
◆作成のポイント
①遺言を遺す人が全文を自筆(手書き)で書く
②日付と氏名を自署し
③印を押して作成する。
!注意点
・夫婦二人が共同ですることは出来ません。一通の遺言に連名した場合、遺言書自体が無効となってしまいます。
・全文をワープロや点字での作成は認められていません。
※平成31年1月より自筆証書遺言の中に財産目録を添付する場合、財産目録についてはパソコンで作成しても良いこととなりました。
・録音やビデオによる遺言も法的には無効です。
・日付は「年月日」が特定できなければ無効となります。
例)7月吉日→×
※日付を記載する意味は、年月日を特定することによって、作成時に遺言能力があったかを判断するためと、二つ以上の遺言が発見された場合、遺言書の先後を確定させるためとなっています。
●実印を押すことは要件にはなっていませんが、後日のトラブルに備えるためにも実印を押しておくことをお勧めします。
平成28年6月3日、最高裁判所において、押印の代わりに「花押」を使用した遺言は無効という判決が下されています。
※押印は拇印でも良いとされた判例があります。(最高裁判所平成元年2月16日)
≪メリット≫
・費用が掛からない
※基本的には、自分で作成するものなので紙とペンさえあれば費用は掛かりません。
・遺言書の内容を秘密にすることができる。
※誰にも内容を知られたくない場合に、秘密を保つことが出来ます。
・書き直しが自由にできる
※気が変わった場合には、自由に書き直すことが出来ます。
≪デメリット≫
・一定の要件を満たしていないと、無効となる恐れがある
※日付についてもそうですが、遺言をする人の真意を確実に実現させるという目的のため、厳格な方式が定められています。この方式に従っていないと、せっかく書いた遺言が無効となってしまう恐れがあります。
・紛失、隠匿、自分の死亡後に発見されない恐れがある
※内容を秘密にしたいあまりに、誰にも知らせずに隠しておくと、自分が亡くなっても遺言が発見されない恐れがあります。また、紛失してしまったり、不利益を被る相続人が隠してしまったり、さらには捨てられてしまうといった心配もあります。
※令和2年7月10日から自筆証書遺言を法務局へ保管できる制度が開始しました。
・家庭裁判所による「検認」の手続きが必要となる。
※自宅で保管されていた自筆証書遺言は相続が開始すると家庭裁判所で「検認」の手続きを受けなくてはならないため、相続人に余計な手間と時間を掛けてしまうことになります。
※法務局で保管していた自筆証書遺言は「検認」手続きを受ける必要はありません。
<公正証書遺言>
公証人に作成して貰う遺言です。費用と手間は掛かりますが専門家による作成なので確実・安心です。
◆作成のポイント
①証人2人以上の立会いのもと
②遺言を遺す人が財産の分割内容等、必要事項を公証人に伝え
③公証人がその内容を元に原案を作成し、遺言者と証人に読み聞かせて
④内容が正しいことを確認したうえで、遺言者および証人が、署名、押印する。
⑤最後に公証人が、①~④の方式に従ったものであることを付記し、署名、押印して作成したもの。
≪メリット≫
・公証人が作成するので、形式の不備などで無効となる恐れがありません。
・公証役場で原本を保管するので紛失や改ざんの心配がありません。
・遺言の趣旨を公証人に伝えるだけなので、字がかけなくても作ることができます。
・検認の必要がないので、相続人に余計な手間をかけずに済みます。
≪デメリット≫
・公証人の手数料など費用が掛かります。
・証人2人を用意しなければなりません。
※証人には、相続人になるであろうと推定される人やその配偶者、未成年者などはなれません。
・定められた手続きが必要となるので、作成する時に手間がかかります。
<秘密証書遺言>
基本は自分で作成しますが、公証人に遺言書の存在だけを証明して貰います。内容を秘密にしながら、遺言の存在を明らかにできます。
◆作成のポイント
①遺言者が証書に署名し押印する。
※署名以外は自筆でなくてもワープロ等で作成しても良いし、他人に代わりに書いて貰っても良い。
②遺言書を封じて、証書に押した印を使用して封印をする。
③公証人1人と証人2人以上の前に封書を提出して、自分が書いてものであることと、書いた人の氏名、住所を伝える。
④公証人が証書を提出した日付と、遺言者が述べたことを封紙に記載した後、遺言者と証人が署名、押印し作成する。
≪メリット≫
・公証役場で手続きを行うので、本人が作成したものであることを証明できます。
・遺言書の内容を秘密にすることができる。
・パソコンで作成することもできる。
≪デメリット≫
・公証人は内容までチェックしないので、要式の不備によって遺言が無効となる恐れがあります。
・証人2人の用意が必要です。
※証人には、相続人になるであろうと推定される人やその配偶者、未成年者などはなれません。
・家庭裁判所による「検認」の手続きが必要です。
※秘密証書遺言は封印してあるので、必ず家庭裁判所で相続人等が立会ったうえで開封しなければなりません。
一般的には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が利用されています。
自筆証書遺言は自分で気軽に作成することが出来ますが、デメリットも大きいので、専門家の立場からは家族への想いを確実に伝えられる公正証書遺言の作成をお勧めします。
当事務所では、自筆証書遺言の作成サポートは行っておりません。また、ご自身で書いた遺言書のチェックを依頼された場合には、書かれている内容の範囲内で、法律に則っているかどうかの判断を致します。
財産の記載が不足していて、結局、遺産分割協議をすることになってしまった場合になど責任を持つことができないからです。
せっかく書いた遺言書が無効になってしまうという事態を避けるためにも、公正証書遺言の作成をお勧めしております。